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役目を終えた名品(札幌門田製ピッケルとSTUBAIのハンマー)

ピッケルは「山男の魂」だと言っていた時代もありましたね。

Smd_a1h2_3 私が初めて手にしたピッケルはフランス製の”シモンスーパーD”です、小振りで扱い易いピッケルでした、当時18歳の少年だった私にすればかなり高価な買い物をしたと云えます。(中央郵便局でバイトして稼いだ全てが消えたように思う)

それから数年後のある日の事、年長の友人が私のピッケルを見て、どうしても交換して欲しいと言って頼み込んできました、彼が持っていたのは門田の特殊鋼穴開きです。

シモンスーパーDには愛着がありましたが、積雪期登山の初歩からを教えてくれた師匠ですし、断れず、根負けして交換に応じたのです、でも門田を手にした時の軽くバランスの良さと、磨き上げた日本刀のようなその輝き、手打ち鍛造の職人技には感動でしたね。

Dscn7372 その当時の札幌門田ピッケルは素材が炭素鋼の”ベルグハイル”と、クロームモリブデン鋼の門田特殊鋼穴開きだったと思います。

今は名前さえも知る人が少なくなった札幌門田、工場を閉め廃業してしまったのはいつ頃だったのか。

シャフトは杖の様に長かったので、私の好みに合わせて丈を60CMに切り詰めました、グリップ部分には凍結した時の滑り止めと団子になったアイゼンの雪を叩き、シャフトが傷むのを防ぐ意味で樹脂に何だったか忘れましたが混ぜて塗布しました。

門田はご覧の様にピック形状がストレートで刻みも有りません、同じ特殊鋼を持っていたMンちゃんは焼きを入れてピックを曲げ氷壁対応型に改造していました。

但し、折損するリスクもありましたので私は止めました、お陰でこうして原型のまま残っているのです。

Dscn7368 秋物衣料を出そうと押入れを探っていたら、布切れでヘッドを包んだピッケルが出てきました。

「あっ、門田や!ここに仕舞ってたんや、可哀想に錆びてるなァ」

何処に仕舞い込んだか探していたんです、見れば薄っすらと赤錆が浮き、輝きは消えています

「久し振りに見るけど、バランスの取れた良い形やなぁ、ホンマに綺麗なラインやわ!ピッケルの名品やね」

Dscn7360 丹念に錆びを落とし磨き込みました、刻印も浮き出てきます、先鋭化する積雪期登攀に適したピッケルを使い出すと全くと言っていいほど出番の無くなった門田ピッケル、いつしか忘れられ押入れの中で寂しく埃を被り眠っていたんです。

Dscn7369 骨董品が、もう1本有りました、オーストリア製のステュバイ(STUBAI)のハンマーです、先輩方の手を経て、何時頃からか私の手元にあります。

Dscn7370 アイスハンマーとしてはピック部分が短く肉厚で氷には対応出来ず、ベルグラを落とす程度だった、ロックハンマーとしては軽量で打撃面が小さくジャンピング作業での効率が悪かった、やはりアイスバイルやロックハンマーに出番を奪われたSTUBAIです。

今では時折り、ハーケンを使用する渓流登りに持って行きます。(草付きにピックを刺して登る事もあります)

Dscn7361 ロゴが読み取れます、山型の中にSTUBAIと刻まれています、ステュバイとはオーストリアの村の名前なのです。

この2本は山で消息を絶った友人の形見である登山靴と並んで部屋の片隅に収まっています。

私の部屋を埋める数々の登山用具は女房から見れば単なるガラクタにしか写らないでしょう、私が居なくなれば、いずれは処分されてしまう運命なんですね。

別にノスタルジックな気持ちや骨董趣味ではなく、これらは一時期でも山行を共にした道具です、時代と共に登山技術は進歩を遂げ、変遷し、出番は無くなりました。

人は言います、

「近代クライミング技術を身に付けようとするなら、古い意識やギヤー類は躊躇せず捨て去れ」と、

でもそう簡単には破棄出来ないのです、貧乏性なんでしょうか。

私の仲間も古いシモン、サレワ、シャルレ等の名品を今でも大切に持っています、登山用具が今日の様に潤沢に入手出来なかった時代を過した山屋の性なんでしょうね。

古い道具をお持ちの同輩諸兄よ、大切に手入れしてやって下さいね。

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